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第4回 イソバンドデザインコンテスト審査委員賞・隈研吾 受賞者インタビュー
狭小敷地に建つ軽やかな都市型塔状住宅
「都市の軽やかな生活のスペースにフィットするように感じられた」——。
今回から新設された審査委員賞のうち、
上記の理由で「隈研吾賞」に輝いたのがこの作品だ。
設計に当たってのポイントを、設計者の鈴木孝紀氏に伺った。
FLEG HIGASHI AZABU
FLEG HIGASHI AZABU 〈使用製品:耐火エスガードBL〉
都心部に建つ10階建てのデザイナーズマンション。狭小敷地に許容限度いっぱいの高さを立ち上げた塔状の建築だ。1層あたりの延べ床面積は約40㎡で、1層ごとを1戸が独占する
 
鈴木孝紀建築設計事務所
鈴木孝紀氏    
 
代表    
鈴木 孝紀氏    
 

 都心の交差点に面した6角形の変形敷地。面積は100㎡ほど。土地を取得したデベロッパーは、そこに賃貸方式で運用する「デザイナーズマンション」を計画した。特命で設計依頼を受けたのが鈴木孝紀氏だ。
 ワンオーナーの賃貸物件であり、発注者としては土地の利用率を可能な限り高めたい。鈴木氏が天空率計算を全面的に採用し、集団規定の制限の中で利用できる面積を算出したところ、6角形の底辺を持つ細長い塔が浮かび上がった。最大高さは約30m。1層ごとを広々としたワンルーム型住居とし、階高を最大高さの10分の1(3m)とするプランが生まれた。
 「広々としていて、なおかつ鉄骨に外皮を張っただけという“軽さ”がある建物——。そういうイメージが当初からありました。自動車の世界には『ライトウエイトスポーツカー』と呼ばれる、軽量級のスポーツカーがあるんですが、その建築版を造ってみたいなと思っていたんです」(鈴木氏)。
 今作品の構造は、6角形の敷地の各頂点に対応するよう、6本のコラム(300φ)を立て、そこにデッキプレートを取り付けて各層の床面とし、鋼管ブレースで水平力を確保したものだ。内外装一発仕上げのため、S造ならではのこうした構造形状が、内部に剥き出しになっている。確かに、軽量化のために内装をはがしたレースカーのような印象もある。
 外皮に用いる建材は、“軽やかさ”を表現できる金属パネルが念頭にあった。採用したのは耐火エスガードL。50mmという薄さのなかで、シンプルな外観、断熱性、内装のすべてが完結する。限られた面積のなかで、少しでも居室を広くとれるというメリットがある。「ライトウエアアーキテクチュア」を実現する複合建材だ。

 
床のRC部分とエスガードでコントラストを描く

 鈴木氏は壁面の構成において、基本設計の段階で模型を製作、道路からの見え方や、外観上の"軽やかさ"などを追求したという。「せっかく6角形なのだから、面白い張り方をしたいですよね。鈍角に折れる屏風をイメージして、外皮が面を構成する感じを意識しました」と話す。道路の交差点に向く側を緩い角度で折れた面とし、そこにエスガードを用いた。エスガードの幅は600mm。1層3mをちょうど5枚で張る計算だ。
 コンクリートの床スラブを少し張り出して打ち、外皮であるエスガードと面的に揃うようにもしている。外観上では、窓ガラス下の壁がそのスラブに当たり、床のコンクリートがそのまま外壁の一部になっている。それが独特のリズム感を生み出した。
 「金属板だけの仕上げでは単調ですし、アルミサッシの雨仕舞にも有効、と考えてのことです。コンクリートと金属の組み合わせが、意匠的に今回のデザインに合うと思ったんです。ほかの外装材を使うより、コスト上のメリットも多少ありました」(同氏)。
 軽やかさを追求し、6角形の一つの角はガラス面同士を接合した。鈍角に折れるフィックスのガラス面を安価に作り出すため、中央にC型のアルミレールを立て、その両側に2つのアルミサッシを接合、各すき間をシーリングした。
 また内装仕上げでは、鉄骨を塗装している。天井はデッキプレートがそのまま見える。「本当に構造と外皮だけでできているので、一般的な位置にコンセントを配置すると配線が見えてしまうんです。それは格好良くないので、コンセントは全部、床に付けました」と鈴木氏。デザインコンセプトを細部まで徹底したことが分かるエピソードだ。
建物中央のホールにも外観デザインに通じるデザインの窓があり、ホール側から教室の活気を伺うこともできる。
穴をうがつように開口を設けた外壁には、換気装置も取り込んだ。
耐震要素も含め、外周の壁内に機能を集中させることで、内部の開放感を高めている。壁へのこだわりが、再開発地域のランドマークとなるシャープなデザインを実現した。

 

日経アーキテクチュア2007 9-24号に掲載

取材・執筆/池谷 和浩 顔写真撮影/川口 愛

 
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