| 第3回 イソバンドデザインコンテスト グランプリ受賞者インタビュー | ||||||
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| 約6万㎡の超精密工場であるセイコーエプソン(株)豊科事業所第2工場棟。単調に陥りやすい巨大な工場建築にメリハリのある美しさで「第3回イソバンドデザインコンテスト」グランプリを獲得。環境保護にも配慮しながら、しかも綿密なコスト計画の中で建築された作品でもある。 今回は、見事グランプリを受賞された清水建設(株)小野田久也氏に、建築に対するお考え、作品コンセプト等についておうかがいしました。 また、同氏の部下で、現在他物件でエスガードを採用された日野陽子氏にも同席頂き、イソバンド・エスガード(注)についてのご意見を聞かせて頂きました。 (注):エスガード、イソバンドは優れた性能と意匠性を持つ当社ならではの金属製断熱サンドイッチパネルです。芯材にロックウールを使ったエスガードは主に耐火建築物の外壁材として、ポリウレタンフォームを使ったイソバンドはそれ以外の外壁材として使用されています。 |
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| 清水建設(株)設計本部 | ||||||
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| 小野田 正直なところ平日はほとんど出かけているので、休日は社内で、たまった施工図を見たり、スケッチを描いたりすることが多いのです。一人で心を沈めて、集中できる時間というのは自分にとって貴重です。とはいえたまにゆっくりと休める時は、極力デジタル系の思考体系を離れてアナログ系の思考体系を刺激するものに触れるようにしています。音楽を聴いたり、街の風景を見ながらぶらぶらと散歩するなど右脳を刺激する情緒的な情報を取り入れるように心掛けているんです。 |
| 小野田 ええ。特に散歩は、建築や街行く人の服装とか、目を通して刺激を受けますし、歩きながらふとアイデアが浮かぶこともあるので、いつもメモ帳は持っていますね。仕事と遊びの間に境界を設けず、渾然一体となって生活するのが自分の性にあっているようです。 |
| 小野田 自分たちの描く一本の線から建物ができていく。そういう仕事に携われて幸せだと思っています。もちろん依頼して下さる方に対しての責任を果たすことが大前提なのですけれど。 |
| 小野田 学生時代、理科系か文化系かというチョイスの中で自分は理科系の人間だと思ったのですが、体系だった学問は好きではなかった、というかできなかったし、B型のせいか、何にでも興味を持ったのです。当時、雑学の大家と言われた植草甚一さんが好きでしたが、私もどちらかというと雑学を楽しむタイプ。音楽、演劇、食、いろんなことに興味を持ちました。理科系でしかもそういう人間に向いている分野が建築ではないかと思ったのです。今でも建築は雑学の集大成だと思っています。 |
| 小野田 私の専門は意匠設計ですが、意匠設計は、構造、設備、デザイン、法的なこと、全般をみる立場でもあります。そして、施主の与条件、敷地の特性、見え方、周囲の風景、生活する人の動線、気象条件や自分の建築理念など、多様な要素をまとめて、そこに最適な回答を探す行為が建築。自分には向いていると思います。 |
| 小野田 研究所や開発センター、本社ビルなど、中で生活する人と建築との接点が比較的多い建築が好きだし、印象に残っています。特に、 4件担当した本社ビルはすべて社長さんと直接打合せをさせて頂きました。人生を極めたトップの方のお話は面白く、大変勉強になりましたし、また、 4件ともすべて家相を重視されている建物でした。例えば入り口は辰巳、南東の方角。日の当たる方角からお客様を迎えて、社長さんが座られる位置は北西の角。中には、プランも窓の位置も大変厳しく、厳密に家相に基づいて設計させて頂いたものもあります。そうしたいわば厳しい規制の枠の中で、逆に規制を建築表現に生かして作ったことにより、結果的にとても心に残る作品となっています。 |
| 小野田 今まで8件の作品で採用致しましたが、最初は、 20年程前に、シンプルで巨大な自動車部品工場の外壁に使用しました。その後、浜松のドイツ人施主の工場にも採用しました。我々日本人は、浜松は温暖な地だと思うのですが、彼らは非常に断熱性にこだわっていました。イソバンドはもともとドイツの製品ですよね。 |
| 小野田 彼らもイソバンドのことを知っていて、この材料ならいいんじゃないかということになりました。最も印象深いのは、約10年前のセイコーエプソンさんの松本南事業所です。外装材の選択に迷っていた時に、コナミさんの建物を見せて頂いて大変参考になり、ぜひ使いたいと思ったのです。というのは、それまで我々が知っていたイソバンドとは異なり、目地が見えなかったのです。つまり小口に箱折加工が施されていたのですが、当時箱折は職人の方の腕に頼るしかなかった。我々は、松本南事業所の施工に、コナミさんで箱折加工をされた方をわざわざ呼んできて頂いたのです。 | ![]() |
| 小野田 そうですね。今ではアルミパネルと変わらないようなデザインが可能となりましたね。松本南事業所は、2スパン分、12.4mスパンの長尺パネルを鉄骨に地組みし、取りつけるというユニ ット工法の先駆けとなる工法を実施した建築でもありました。連窓サッシもあっという間につけ終わり、無足場工法で非常に短工期だった記憶があります。仕上がりもすっきりと、スピード感のあるものとなっています。今回、同じセイコーエプソンさんの豊科事業所を設計させて頂くにあたり、 久しぶりに見に行きましたが、竣工後10年程経過しているにもかかわらず、汚れがほとんどなかっ たのです。先方に確認すると、竣工後一度もクリーニングをしていないそうです。私は建物の汚れが目立つのが一番嫌いなのですが、イソバンドは、汚れが目立たないという点からもメリットのある材料だと再認識しましたね。 |
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| 日野 特に外観がフラットで、きれいにみえるところが一番気に入っているのです。生産・研究施設の分野で用いられる素材の中では、高級素材という認識は持っています。 |
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| 小野田 そうだね。設計する者にとっても使いたい素材だからね。昨年、彼女が担当した建物で、施主の与条件がALCだったのですが、コンペの際にエスガードで提案し、受注した建物があったのですよ。 日野 そうなんです。エスガードのサンプルを御社から取り寄せプレゼンの際に提示し、お施主様 にも実際に素材を見て頂き、断熱性などの特長についてご理解頂きました。 小野田 もちろんコンペの勝因はいろいろあると思いますが、エスガードで提案させて頂いたこともその一つとして力になったと思いますよ。 |

| 小野田 最近は建物のライフサイクルマネージメントに対するニーズも高くなっています。断熱性能が高く、メンテナンスコストもかからないとなると、トータルで提案する際、イソバンド等の断熱パネルは有利だと思いますね。 |
| 小野田 豊科事業所というのは、携帯電話の液晶パネルを生産している工場なのです。携帯電話の急速な需要増に追いつくために、超短工期が第一の条件でした。また、建設地が寒冷地で、しかもクリーンルームがあるので年間を通じて温度・湿度の条件を守るための高い断熱性と高気密の確保、高いフレキシビリティなど先端精密産業施設に要求される諸条件を満たす必要がありました。さらに、セイコーエプソンさんは、環境負荷の低減を大変重要視されている企業で、常に省エネルギー対策が重要なテーマになっています。我々は、そうした諸条件を考慮して総合的に耐火エスガードBLがベストであると判断しました。 |
| 小野田 省エネルギーのためには、地道なチャレンジの積み重ねが必要です。この建物では、例えば外気を使った冷房とか、蓄熱槽によって熱の負荷を均等にする等、いろいろな手法を組み合わせ、建築と設備、生産装置の三者が一体となった省エネルギー施策により従来比30%の削減を実現しました。 竣工後も継続してデータをとっていますが、当初の省エネ目標値を相当クリアしております。その点施主様からも大変評価を頂いております。周辺環境への配慮としては、デザイン的に周囲への過度のインパクトをおさえるために工夫しています。建物は、桁行160m、間口80mと大きく、階高 も棟別に4種類あります。その他、巨大な給気ガラリや排気ガラリ、装置や空調機の搬入口、非常用 進入口など、外壁面に対して複雑な要素がありますが、無秩序な配置や外への露出を極力避けて います。エスガードの割付も建物全体で大きく5種類あります。600・750・910・1000mm等、多様 なサイズを組み合わせて4種類の階高が自然に見えるように視覚的な効果を引き出しています。複雑な要素の建物がエスガードという非常にシンプルなパネルを使うことによって複雑さを感じさせない、すっきりとした建築になったと思います。ただ、エスガードだけですと、建物として単調になるので、部分的にカーテンウォールやアルミスパンドレルなどを組み合わせて変化をつけています。北面中央に省エネルギーを象徴するシンボリックな直径10mの蓄熱槽が立っていますが、これも外観に変化をもたせることに役立っています。
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| 小野田 周囲は非常に景観の美しいところです。建設地からはアルプスが一望できる。そうした立地条件を生かして、随所に借景として自然の景観を取り入れるスポットも用意しています。クリーンルームは閉鎖的になりがちですが、クリーンスーツをきたままでも絶景を見ることができるように設計しています。中で仕事をされている皆さんの快適性の確保は大切にしたいと思ってい ますから。 日野 私は、当プロジェクトが始まった時、建設地の風景写真を渡されて、その中に設計イメージの建物をはめ込み合成するという作業をしたのですが、竣工後の完成作品を見ますと、あのボリュームの建物が周辺環境に調和して、まさに当初のイメージ通りに仕上がっていることに感動しま した。 |
| 小野田 はい。今回の工事は、我々設計スタッフは現地に常駐しながら設計を進め、同時に施工も行っていくという異例のスピードで行われました。こうした生産施設では、装置に関する情報はなかなか頂けない。お客様自身も竣工まで必死にラインの設計をされるのです。建築と中のラインが平行してつくりあげられていく。そうした中で、現場の皆さん、メーカーさん、設計スタッフ、多くの皆様の多大な協力により工事を完工することができたと感謝しています。当施設は、現在、生産がフル稼働で動いております。設計に携わった者としては一番嬉しいことです。 |
| 小野田 常に心掛けていることは三つあって、まずこれは、先輩から教えられたことでもあるのですが、図面の中を歩くということ。例えば、廊下を歩くと左右に何が見えるか、部屋に入るとそこに何が見えるか、部屋からは何が見えるか。図面を回しながら4方向から見て、中に住まう人の生活をトレースしてみる。自分の描いた設計図が本当にそれでいいのかシミュレーションするのです。これは建物が完成するまで問い続けます。 2つ目は、必ず自分の手を動かす。自分で描くということ。手を動かすことによって見えてくることがたくさんあります。三つ目は、極端に言えば24時間建築のことを考えていること。仕事と遊びが渾然一体となった生活が好きだといいましたが、遊びながらも仕事のことは頭のどこかで考えていますね。設計は歩きながらでもできるのです。 |
| 小野田 そうですね。中で生活する人が、快適で、不便を感じることなく、毎日が創造的に活動できるような空間を提供したいと常に思っています。生活の中で、設計のヒントを得ることもあると思うし、自身の生活者としての意識、感覚は大切かもしれません。 |
| 小野田 ガラスとのコラボレーション、鉄骨とのコラボレーションなど、素材を活かした建築がより成立しやすいように板金工事の範囲を超えて、金物工事や建具工事と共同で、より鋭いシンプルな見え方の商品開発をお願いしたいと思っています。例えば屋根と外壁の取り合うけらばの納まりなどは、金物工事とタイアップして工夫することでよりいいものができるようになると思います。そういったことも含めてメーカーさんには新しいアイデアを出して頂きたいと思います。もう一つは内皮の色ですね。 日野 最近はイソバンド・エスガードとも内皮あらわし仕上げがほとんどですが、その内皮カラーにもっとニュートラルなものを加えて頂ければと思っています。できれば黄色や緑が混合されていない方がいいのです。今では研究・生産施設内のカラーコーディネートも非常に洗練されてきています。例えば床と柱はグレー、天井は白、内装・家具の一部や社員の制服にビビッドカラーというイメージに、壁がアイボリーでは合わないのですね。将来の増築や改修のことも考えれば標準色の中にニュートラルな色をぜひ加えて頂きたいと思っています。 |

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