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第2回 イソバンドデザインコンテスト 受賞者インタビュー
(株)日建設計 設計長

PROFILE


西村 眞孝氏
(にしむら まさたか)
1944年  愛知県名古屋市生まれ
1968年  名古屋工業大学建築学科卒業
 (株)日建設計 名古屋事務所入社
1980年  (株)日建設計 東京本社転勤
現在に至る

■ 作品経歴 石川県柳田村立柳田中学校  
北陸銀行室町中央ビル  
京急第一ビル(ウィング高輪・ソニー第二本社)  
東京都中央卸売市場大田市場  
キヤノン下丸子本社ビル  
お台場五社倉庫  
トーハンロジスティックスセンター  
かわさきファズ物流センター---------公共の色100選  
松本市西部学校給食センター  
新潟スタジアム「ビッグスワン」---日本建築士会「私の推薦する作品」入賞
 
他多数
 

「物流施設の事務所棟」を巨大な船に見立てて、第2回イソバンド・イソダッハ・デザイン・コンテストの優秀賞に輝かれた西村眞孝氏は、日本有数の設計事務所・日建設計の設計長。今回は、同じ設計室にお勤めの井川陽一氏にもご同行頂き、巨大組織の中での重責を担いながらも、自由な発想を持ち続けておられる西村氏に、優秀作品を始めとする建築物やイソバンドへの思いをうかがいました。

新潟スタジアム「ビッグスワン」は、つくっていく段階でだんだん白鳥のイメージに

——では早速ですが、西村設計長は、今までにどのような建物を手がけていらっしゃるのですか?
西村 いろいろあるのですが、最初は銀行や京急第1ビルなどのいわゆる「ビルもの」をやっていました。その後、東京都の中央卸売市場大田市場の設計で事務棟だけ担当のつもりが市場全体を見るようになりまして、そのあたりから物流関係の仕事を手がけるようになりました。

——大田市場というと、弊社のタイマフロンGLを大量にご採用頂き、ありがとうございました。
西村 いえいえ、おかげさまでもう10年以上経ちますが、海の近くなのにサビの発生もありません。この大田市場は延べ20万m2くらいでしたが、大規模建築の設計が多くなったのもその頃からで、その後のお台場五社倉庫は9万m2。(受賞作の)かわさきファズ物流センターは17万m2です。

——最近は、ワールドカップが行なわれる新潟スタジアム「ビッグスワン」も設計されておりますね。
西村 はい。新潟スタジアムは、‘94年から7年間かけて2001年の3月に完成しました。かわさきファズはその間に完成したことになります。

——随分といろいろな建物を手がけていらっしゃいますが、設計のイメージはどのようにして生まれてくるのですか?
西村 普通は、建物をつくっていく段階で徐々にイメージが湧いてくるといった感じですね。たとえば「ビッグスワン」——大きな白鳥という愛称の新潟スタジアムの場合も、初めから白鳥を意識していた訳ではなくて、いろいろな設計条件を組み立てていた時にたまたま模型の白い膜屋根やアーチが白鳥に見えたのです。するとスタジアムの前の潟にも冬には白鳥がくるし、「白鳥のイメージにつながるスタジアムです」という風に説明した処、それが一人歩きして「初めからそういうイメージでつくった建物だ」ということになったのです。

輸入促進基地「かわさきファズ」は、空に向かって動き出す船のイメージ。

——今回のコンテストで受賞されました「かわさきファズ物流センター事務管理棟」は、船をイメージされているようにお見受けしますが。
西村 はい。これは「ビッグスワン」と違って、初めから船のイメージをねらっていました。単純に四角いものではなくて、もっと親しみのある輸入促進をイメージできるものをと考えたのです。
  実はこれにとりかかる前にイタリアのヴェネチアへ行ったのですが、そこで海側から街並みを見ていた時に、輸入促進基地である「かわさきファズ」も海との関わりが強いことを感じまして、海側から見た表現として船を思い浮かべたのです。すると色は海を表す青にしよう、またそれをだんだん濃くしていって上に向かう船の動きを出そう、とアイデアが広がっていきました。
  事務所部分は当初倉庫の屋上部分に配置していたのですが、それでは面白くないので別棟にしてブリッジでつなぐことを考えました。これはロンドンのタワーブリッジのイメージが少し入っています。それから各階の外壁をせり上がらせ、軒裏には赤い線を入れました。


井川 そうなのです。中央部分のピロティの柱の色がピンクで、それとあわせて軒裏の陰になっているところが全部、赤になっています。私は当時現場に出ていたのですが、現場で色を伝えたら、「ほんとにやるの?」って驚かれましたね(笑)。

西村 そういう目立たないところに強烈な色を使うのが僕のやり方なものですから(笑)。

井川 本当に、かなりのインパクトでしたね。ある程度この建物ができた時に現場からタクシーを呼んだのですが、場所の説明をするのに「今度新しくできたピンクの柱のある建物です」と言ったら、すぐに「わかりました!」と返事が来るほどです。

西村 このデザインにはもうひとつ要素があるんですよ。地理的に、陸の孤島というかパートで働いてくれそうな女性たちもあまり集まらない場所なので、コンクリートのままではなくて色を使ってきれいな建物にして、雇用の面にもいい影響を出せればと考えました。

井川 3階の食堂まで海のイメージにこだわっていて、天井にカモメを飛ばしたり雲を浮かせたり楽しい雰囲気になっていますので、一度食事に行ってみてください(笑)。



若い人があまりやりたがらない地味な建物でも、やり方次第では世間に認められる面白い仕事ができる。

——本当に、毎日通うのが楽しくなるような建物ですが、実際の評判はいかがですか?
西村 働いている方たちの評判は直接聞いていないのでわかりませんが、施主の方にはたいへん喜んでもらっています。それと今回賞をいただいて、非常に感謝しています。というのも、こういう物流施設や倉庫は本来地味な仕事で、若い人たちがあまりやりたがらないものですから。でも、そういう建物でもやり方次第ではちゃんと世間に認められる面白い仕事ができるということを示せましたので。
  物流施設というのは、床と室内の容積さえあれば機能的には満足してもらえるので、形の上ではわりと好きなことができるのです。大田市場の場合もそうですが、意外と面白い形にできる種類の建物なんですよ。

——「若い人たち」と言いますと、西村設計長は、日建設計という大きな企業の中で若い方たちの上で指揮しておられますが、井川さんからご覧になって上司としての設計長はいかがですか?
井川 上司というか、上下関係をあまり感じさせずに、好きにやらせてもらっています。自由にさせてくれて、責任はちゃんととってくれる。だから逆に、私たちの立場の人間がどういう風に動けばいいかが問われます。

西村 うちのグループは、上司とか部下とかいう感覚はあまりないようにしています。これはもともとの日建設計という会社の体質なのですが、個々の設計者が集まっているというだけで、いいアイデアであれば下の人の意見でもそれを取り入れます。その代わり、少なくとも自分が設計や提案したものに対しては、自分の責任で解決する心構えでやってもらっています。だから「好きなことをやりなさい。どうしようもなくなったら、クレーム処理はひきうけるから」と言えるのです。

アールの出し方に苦労しつつも、イソバンドのできばえには満足。今後はより精度の高いシステムを期待。

——「かわさきファズ」のお話に戻らせて頂きますが、この建物に耐火イソバンドBLをご採用頂いた理由をお聞かせ頂けますか?
西村 いろいろありますが、2点あります。まずは断熱性能を含めて必要な機能が備わっているということ。次にコストパフォーマンスに優れていること。イソバンドは高級感があるわりには価格的にも使いやすいので、全体的なコストダウンを要求されている物流業界の建物にマッチした外壁パネルだと思います。

——今までにもイソバンドをお使いいただいたことはあったのでしょうか?
西村 僕自身は初めてですが、人がやるのを見ていて、面白そうな材料なので一度使ってみたい外壁材だと思っていました。

井川 同じチームの人間が工場をつくった時に、上の方に窓をずらっと並べて、その上下に断熱サンドイッチパネルを横につなぐように使っていたのです。同じ敷地内の事務所棟はコンクリート系の材料だったのですが、塗装の種類を同質にしたので仕上がりはどちらも鉄板のように見えて、これはいいと思ったわけです。逆にコンクリート系の方が施工の面で問題があったりしたものですから、それなら今回は鉄板をそのまま使おう、ということになりました。

——これだけ大きなアール状のパネルとなると、精度を出すのに大変なご苦労をされると思いますが、実際の施工はいかがでしたか?

井川 そうですね。同じアールの連続なのですが、アールをはかるポイントや方法の誤差でパネル1枚1枚の寸法が変わってきます。直線の部分は問題ないのですが、アールの部分は手作業になります。

——今回は、耐火イソバンドBLを横貼りで桁行方向に最大限に使って頂いておりますね。

井川 ええ、直線部分だけで120m以上あります。胴縁の精度がいいのでパネルもきちんと納まるのですが、それでも下地材との間にできたわずかな隙間が、長いスパンで見るとデコボコに見せてしまいます。手前で1ミリの差でも向こうへいくと10ミリ以上の差になりますから、モルタルや薄い鉄板をつめて精度を出した部分もあります。

——微妙なグラデーションをつけられた色についてはいかがですか?
井川 この色の違いが難しかったですね。60cm×3mのものを上中下の3枚別々に見ていると、上と下はともかく真ん中の見分けがつかなくなってきまして。夜になると職人さんも分からなくて、貼り直した部分も何枚かあったようです。「近くでこれだけ分からないものを、離れて見るとどうなるんだろう」と不安もありましたが、できてみるとそれなりにグラデーションがついていてホッとしました。

——そういう現場でのご苦労がいろいろあって完成したわけですが、結果的に耐火イソバンドBLを使われたことについては、どのような感想をお持ちでしょうか?
西村 出来栄えには満足しています。ぼくは事務所関係の仕事が多かったので、外壁のパネルというと精度を維持するために必ずフリーのジョイントをとっています。でも工場等で使われるイソバンドの場合はそうではなくて、下地金物に直接ビス止めですね。だから当初はオフィスビルの外装としてきれいに納められるかという点で心配があったのですが、そこは手作業等で努力して頂き、イメージ通りに綺麗に仕上がったと思っております。


西村 もともと断熱性能と表面の意匠性をもった商品と思っております。これからもっと使用範囲を広げるのであれば、高層ビルにも対応できるようなより精度の高いシステムを期待しています。

リサイクルよりも、いかに長く使うかを考えた方が環境にはいいと思う。

——最後に環境問題等も含めて、最近の建築物の傾向で感じておられることがございましたら、お聞かせ頂けますか?
井川 今リサイクルということがよく言われますが、1回建物を壊してとり外した部材で次に何をどこまでつくれるかで、その価値が違ってくると思います。たとえば穴を開けたものがどこまで再利用できるのか…。細かいことですが、そこまでできたら価値は高いと思います。

西村 ぼくはリサイクルそのものがおかしいと思っています。ヨーロッパみたいに、いったん建てたものは50年、100年と子子孫孫で繰り返して使うべきで、そのためには材料も耐久性やメンテナンス性を十分に考慮したものであってほしいし、設計も将来的にいろいろなことに対応できるように可能な限りフリーにする。リサイクルと言うよりは、いかに長く使うかということを考えた方が、環境にはいいと思いますね。

井川 それはそうだと思います。ただ当初の計画がそういう風に考えて作っていなかったら、利用状況が変わるたびに新しいものを、となってしまう。今そういうことを考えずにつくった建物が多いもので、余計にそういうことが気になりますね。
  その点「かわさきファズ」の場合は、外側はこのままで中はある程度フレキシブルにつくってあるから、「事務所を広げたい」という時には、この壁をこっち側につくり直して、ということも可能です。

西村 一番ネックになるのは電気や空調の設備のスペースなのですが、「かわさきファズ」の場合はそれなりのスペースを考えてあります。
 欧米の建物は、外は古く見えても中は現代的に作り変えて使っています。日本の建物も、朽ちたら建て替えればいいというような発想があるようですが、法隆寺は千年以上経ちますし、京の町屋も百年以上になります。本当の日本文化は、建物をもっと大事にするはずではないかと思います。

——まさに仰る通りです。欧米では、「われわれは子孫に500年の建築物を残す」と言っているようですが、私たちも肝に銘じるべき問題だと思います。今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

 
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